30歳以上の日本人で歯周病に罹患している割合は約80%とされています。病状が悪化するにつれ歯を失うリスクがともないます。さらに近年、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞など深刻な合併症を引き起こすことも判明してきました。
本コラムでは、歯周病のリスクと合併症の関係性を解説します。歯周病がどのようにして合併症につながるのかを把握し、日頃から歯周病予防を心がけましょう。
歯周病は、歯垢の中に増殖した歯周病菌が排出する毒素により、歯茎や歯槽骨(しそうこつ:歯の根を支える骨)が炎症を起こした状態です。病状が悪化すると、歯槽骨が溶け出し、やがて歯が抜け落ちてしまいます。
歯周病菌の毒素が及ぼす影響は口腔内にとどまりません。この毒素は歯茎の毛細血管を通って全身に入り込み、あらゆる器官に悪影響を及ぼします。歯周病が進行するにつれて、全身への影響のリスクはさらに高まります。歯周病は、日頃のブラッシングと歯科医院での定期クリーニングで予防できる病気です。また、歯周病を予防することで、全身疾患のリスクを軽減できます。
歯周病菌が排出する毒素により引き起こる合併症は、以下の通りです。
歯茎の毛細血管を通して全身に入り込んだ歯周病菌の毒素は、動脈の弾力性を低下させ、血液の通り道を塞ぐプラークを発生させます。血管から剥がれたプラークは、細い血管を通れず、血管が詰まってしまいます。その結果、血液の循環が上手くいかず、心臓に負担がかかります。この状態は動脈硬化と呼ばれ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす原因になります。
また、妊娠中に歯周病になると、早産や低体重児出産のリスクが高まる傾向があります。歯周病菌のなかに、陣痛の引き金になるホルモン「プロスタグランジン」の分泌を促進する働きがあるためです。
歯周病菌から排出される毒素は、インスリンの働きを低下させるため、糖尿病の悪化にもつながります。さらに、唾液に混ざった歯周病菌を嚥下してしまうと、気管支炎を引き起こし、誤嚥性肺炎を発症するリスクを伴います。
このように、さまざまな疾患や病状を悪化させてしまう恐れがあるため、日頃から歯周病予防に取り組むことが大切です。歯茎の腫れや出血は歯周病の初期症状かもしれません。気になる方はお近くの歯科医院を受診し、適切な治療を受けましょう。