インプラント治療を行ううえで、歯茎が健康な状態を保っていることは最低条件ですが、歯周病により歯槽骨の骨吸収が進み、インプラント治療ができないケースもあります。
本コラムでは、インプラント治療の事前準備として顎の骨量を増やす「ソケットリフト」について解説しています。ソケットリフトのメリットやデメリット、治療の流れなどを把握し、治療方法の1つとして検討しましょう。
ソケットリフトとは、上顎の奥歯付近の骨が薄い場合、インプラント埋入の深さを確保するために選択される骨造成術の一つです。適応できるのは、顎の骨の厚みが5mm以上ある場合で、歯1本分ほどの範囲に限られます。
ソケットリフトのメリットは、手術範囲が狭いため傷口が小さく、患者への負担が少ない点です。痛みや腫れ、出血のリスクが低く、手術が短時間で行えるほか、手術費用も抑えられます。一方、ソケットリフトのデメリットは、手術範囲が狭いために骨量を増やす範囲が限定的である点です。複数のインプラントを埋入するため、広範囲に渡って骨量を増やす必要がある場合は、サイナスリフトを選択するのが一般的です。
このように、ソケットリフトは患者さまへの負担が少ない術式の一つです。メリット・デメリットを理解したうえで治療を開始しましょう。
一般的なソケットリフトの手術の流れを説明します。まず、歯茎を切開して歯槽骨を削り、空いた穴から器具を挿入します。次に、内部にある粘膜(シュナイダー膜)を押し上げ、インプラントを埋入する部分に自分の骨または人工骨補填剤を移植します。術後3~6ヶ月程度で粘膜が安定しますので、この段階で骨造成は完了です。
ソケットリフトはインプラント手術も同時に進めるケースが多く、サイナスリフトよりも短期間で治療が終了します。治療期間が短い分費用も抑えられ、3~10万円程度の費用にインプラント費用が上乗せとなります。手術の流れや費用相場は、症例によって異なりますので、不安や疑問がある場合は、歯科医師に相談し、納得したうえで治療を受けましょう。