インプラント治療の際に歯科医師から「骨幅が狭いのでスプリットクレストを行いましょう」と提案されることがあります。スプリットクレストは、歯槽骨の幅が狭くインプラント体が埋め込めない場合に有効な治療法です。
本コラムではスプリットクレストの基礎や手術方法を解説します。基礎知識を得て、手術への不安を解消しましょう。
スプリットクレストは、インプラントを埋める土台となる歯槽骨の幅を確保する治療法です。直径約4mmのインプラントを埋めるには、5~6mm程度の骨幅が必要ですが、この基準に満たない方も多くいます。このような方には、骨を二分割して骨幅を確保するスプリットクレストが有効です。
スプリットクレストは、手術の事故や痛み・腫れが少なく、インプラント体と骨が固定されやすいメリットがあります。一方で、硬い骨は割れやすかったり、術後に骨が吸収して歯槽骨が下がってしまったりする可能性もあるため、手術には高度な技術力が求められます。また、海綿骨がない場合や骨幅が3mm未満、残存している歯のすぐ近くでは適応が難しいとされます。
これらの条件がクリアできた場合に、スプリットクレストが可能となります。
主な手術の流れは次の通りです。
このようにスプリットクレストは、歯槽骨の幅が狭い方でもインプラント治療を行える手術方法です。不安点は歯科医師に相談しながら、自身にとってベストとなる治療を見つけていきましょう。
次は骨造成手術としてスプリットクレストを選択した際の手術と、その回復期間について説明していきます。手術方法を理解し、安心して治療を受けられるようにするためにもぜひ参考にしてください。
スプリットクレストは、骨の高さはあるものの幅が薄いことが理由でインプラント体を埋められない場合に行う手術です。スプリットクレストの手術手順は以下のとおりで、骨の頂点をノミのような器具で分割し広げたところにインプラントを埋入します。
広げた骨が安定・補填した骨と結合し噛む力に耐えられるようになったら、通常のインプラント治療と同等に人工歯を被せて完了です。注意点として、骨質が硬い方は手術自体ができない可能性があります。そのため、スプリットクレストが適しているかどうか、歯科医院での事前検査をきちんと受けましょう。
スプリットクレストの治療期間は3ヵ月から半年ほどといわれています。1回の治療でインプラントの埋入までできたり骨の再生が早かったりすると、人工歯の装着までの期間も早まるでしょう。押し広げた歯とインプラントがしっかりと固定されれば、人工歯を装着し普段通りの食事も可能となります。一方で、術後の経過しだいで傷口が腫れるなどの症状が現れてしまうと、治療が長びく可能性があります。その際は治療内容に応じて通院回数も増えるため、回復期間は延びる点を理解しておきましょう。
スプリットクレストは、インプラント体の周囲が自分の骨である点や、外科的処置を行う範囲が狭い点などがメリットといえます。治療の際は、どの骨造成手術を選択すべきか適切な診断を行うため、インプラント治療に詳しい歯科医院を選ぶようにしましょう。
最後の章ではスプリットクレストの治療前・治療後に何に気をつけておくべきことについて解説しています。治療前後のチェックリストとして参考にしてください。
ここではスプリットクレスト治療を受けるうえで、事前準備として歯科医院の選定方法や注意点について解説します。
まず治療開始前に、どの歯科医院で治療を受けるのかが非常に重要なポイントになってきます。事前カウンセリングを通じて担当する歯科医師とコミュニケーションを取り、不安や疑問をクリアにしておきましょう。また、カウンセリング時には、治療費や治療期間についても確認するようにしてください。
次にスプリットクレスト治療前には、患者さま自身が日々のセルフケアをしっかりと行うことも大切です。日々のセルフケアを怠ると、歯周病などの炎症性疾患になる可能性が高く、治療期間や費用も増えてしまいます。日々のセルフケアがインプラント治療成功のカギを握っているといっても過言ではありません。
治療を行うにあたり、患者さま自身が受け身ではなく主体的な姿勢で関わることが治療成功への第一歩です。疑問や治療のデメリット部分など、歯科医師と納得が行くまで質問して、できる限り不安を解消してください。
スプリットクレスト治療後には適切なアフターケアが欠かせません。さらに、日常生活でもいくつかの注意点が必要となります。
まずは継続的なフォローアップが必要です。スプリットクレスト自体は日帰りの手術ですが、骨の状態を定期的に確認しなければならず、3~6か月程度は歯科医院に通わなければなりません。また、治療直後は激しい運動や重いものを持ち上げることはできるだけ避けたほうがよいでしょう。歯を食いしばることで術後の患部が出血したり、腫れたりする可能性があります。もし運動後した後で唾液に血が混じっているようなことがあった場合には、歯科医院を受診し、患部の状態をチェックしてもらいましょう。
アフターケアのポイントや日常生活での注意事項を守ることで、治療をスケジュール通りに進めることが可能となります。さらに、これらの対応をしっかりと行うことで、早期にインプラント治療を受けることも可能となります。治療の成功は、患者さま自身の注意深いケアにかかっています。安全かつ効果的な治療のために、これらのポイントをしっかりと実践してください。