歯周病の感染リスク
歯周病は、全身にさまざまな悪影響を及ぼす一方、初期段階では自覚症状が少なくサイレントディジーズ(静かなる病気)とも呼ばれる疾患です。そのため、感染を避けたい方も多いでしょう。
歯周病菌は唾液に含まれているため、箸やお皿などの食器の使い回しやキスなどによって感染します。罹患しやすい 疾患のため、感染後の発症を予防する取り組みや、早期発見早期治療につなげる習慣が大切です。
本コラムでは歯周病の感染リスクや、発症につながる要因について解説しています。歯周病の感染リスクや、リスク要因について知りたい方は最後までご覧ください。
歯周病の感染リスクになる行為とは
産まれたばかりの赤ちゃんの口の中 には、歯周病菌は存在しません。しかし、家族 が歯周病菌を持っている場合、唾液を通じて感染してしまいます。食器を共有するだけでも感染につながるのです。
また、鍋や大皿料理を箸で直接つついたり、回し飲みをするのも感染リスクを高めます。食器の共有は避け、とりわけ用の箸やスプーンを用意するなどの工夫をするとよいでしょう。
しかし、食器の共有を避けても、成長してからキスなどで感染するケースもあります。そのため、歯周病の感染リスクを完全になくすのは難しいといえます。
歯周病の発症につながる要因とは
歯周病の原因菌が口腔内 に存在しても、ただちに歯周病を発症するとは限りません。次に、歯周病の発症につながる主な原因を確認していきましょう。
歯垢(プラーク)を落としきれていない
歯周病は、歯垢を落としきれていないと発症しやすくなります。
細菌のかたまりである歯垢は、粘性があり、歯と歯茎の境目に貼り付いて蓄積する 特徴があります。歯周病菌は歯垢をエサにして繁殖するため、歯垢を落とさずにいると、歯周病菌も増殖してしまいます。
歯周病菌は空気を嫌うため、歯周ポケットから侵入し徐々に奥まで入り込んで増殖します。そのため、毎日歯みがきをしていても、歯垢が残っていると、やがて歯周病を発症してしまいます。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりも、歯周病の発症リスクの一つです。
歯を噛みしめると、歯や歯茎に大きな力が加わります。噛みしめによるダメージが蓄積すると、歯の周囲組織に炎症が起こり、やがて歯周ポケットが深くなります。歯周ポケットの中で歯垢をエサに歯周病菌が増殖すれば、歯周病を発症してしまうでしょう。
歯並びや噛み合わせの悪さ
歯並びや噛み合わせの 悪さも歯周病の発症リスクを高めます。
歯並びが悪いと歯の重なりに歯ブラシが届かず、歯垢がたまりやすく なります。また、歯並びや噛み合わせが悪い状態で食いしばると、一部の歯に過度な力がかかって歯や周辺組織にダメージを与えます。そのため、炎症が起こりやすく 、歯周病の発症リスクを高めてしまいます。
糖尿病
糖尿病と歯周病は深い関わりがあり 、双方を悪化させてしまう傾向にあります。
糖尿病に罹患していると、細菌への抵抗力や体の自然治癒力 が低下するため歯周病菌が繁殖しやすくなります。また、歯周病の発症や進行が、糖尿病の悪化につながることもわかっています 。歯周病と糖尿病は影響し合いながら双方が悪化する悪循環に陥ってしまう関係にあります。
喫煙
喫煙喫煙も、歯周病発症のリスクを高めます。
タバコの煙は歯周病だけでなくさまざまな病気のリスク因子としても知られます。タバコに含まれる一酸化炭素が歯周組織の酸素の巡りを悪くしたり、ニコチンが歯周病菌に対抗する 白血球の働きを低下させるためです。
歯周病の発症後、喫煙の継続は歯周病治療の効力を低下させてしまうなど、喫煙は口腔内の健康に悪影響を及ぼします。
女性には歯周病リスクが高まるタイミングも
女性は、妊娠中や閉経後など特定のタイミングで歯周病リスクが増加します。女性ホルモンによって増殖する歯周病菌があるためです。
特に妊娠中は女性ホルモンの分泌が急激に増加し、歯周病が進行しやすくなります。加えて、つわりや体調の変化で口腔内を清潔に保つのが難しくなり、より歯周病を進行させてしまうケースも見られます。
妊娠中の歯周病は早産や低体重出産のリスクが約7~7.5倍まで高まるとされています 。歯を磨くのが難しい場合は 口をゆすいだり、体調をみながら歯科検診を受けたりするとよいでしょう。
また閉経後は、女性ホルモンが減少し唾液の分泌が減少します 。唾液による浄化作用が働かず歯周病が進行するため、日頃の口腔ケアを行う必要があります。
歯周病にならない・悪化させないための3つのポイント
歯周病菌が口腔内 に存在しても、発症や悪化を防ぐ ことは可能です。ポイントは以下の3つ です。
- 毎日の歯みがき
- 歯科医院での定期検診
- 正しい生活習慣
歯みがきは、起床後・食後・就寝前 に行うことを心がけましょう。歯みがきが難しい場合は、口をゆすぐだけでも効果があります。また、歯ブラシだけでは歯垢の6割程度しか落とせないため、フロスや歯間ブラシなども活用して歯垢を除去しましょう。
歯垢は、早ければ24~72時間程度で石灰化が始まり歯ブラシでの除去が難しくなります。約15日で歯石になるため、定期的に歯科医院のクリーニングを受け、歯周病の早期発見・早期治療につなげることも重要です。
体調が悪いとき や風邪の時に歯茎が腫れるのは、免疫力が弱まり歯周病菌が活発になる ためです。免疫力の維持には、ストレスの軽減や禁煙、睡眠時間の確保が重要です。生活習慣を整えることで免疫力を高めましょう。
生活習慣と歯周病の関係については以下のコラムが参考になります。
歯周病を予防して歯の健康を維持しよう
歯周病は唾液から感染します。そのため、食器の共有やキスなど、日常的な行為で感染してしまいます。しかし、感染してもすぐに 発症するとは限りません。歯周病の発症予防には、毎日の歯みがきで歯垢を減らし、歯科医院の定期検診で歯周病の発症や進行を見つけるのが特に重要です。
西村歯科は、患者さま一人ひとりの状態にあわせた最適なケアで、お口の健康をサポートしています。ご自身が歯周病を発症していないか 不安な方や、歯周病が進行しているか知りたい方は、歯科医院の健診 を受けてみてください。
- Q1:歯ぐきから出血したりしなかったりするのはなぜですか?
- A1:出血は歯ぐきに炎症が起きているためおこります。しかし、炎症の度合いや健康状態によっては出血しない場合もあります。頻度が少なくても出血する場合は、歯科医院を受診しましょう。
- Q2:歯周病は、糖尿病以外にどんな疾患に関わりがありますか?
- A2:肥満や血管の動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞に関わりがあるとされています。また、誤嚥によって気管支にたどり着く歯周病菌があり、誤嚥性肺炎の原因になるのがわかっています。