歯科コラム

ソケットリフトの適応や禁忌について

インプラント治療において、インプラント体を埋め込む歯槽骨が薄い場合に行う治療法の1つがソケットリフトです。本コラムではソケットリフトが適応可能となるケースと禁忌事項、長所・短所を解説します。「骨が足りない」と診断されてお悩みの方はぜひ参考にしてください。

ソケットリフトが適応可能なケースと禁忌事項

ソケットリフトは上顎の歯槽骨の高さを補う骨を造成する治療法です。専用器具で骨を押し上げて人工骨などを移植して高さを作り、インプラント体を埋めるスペースを確保します。適応となる条件は骨の高さが5mm以上あることで、歯1本程度の狭い範囲の治療に向いています。また、ソケットリフトの治療と同時にインプラント体を埋める方法であれば、治療期間もそれほど伸びることはないでしょう。

ソケットリフトの禁忌事項は、上顎に病変があることです。また、骨の高さが5mm未満の場合も不適応となります。基準より骨が薄い場合は、上顎や歯茎の側面から骨の移植を行うサイナスリフトであれば治療可能です。

ソケットリフトの長所と短所

ソケットリフトの長所と短所を解説します。まず、ソケットリフトの長所は次の3つです。

  • ・上顎の骨が薄くてもインプラント治療が受けられるようになる
  • ・傷口が小さいので術後の腫れや痛みがおきにくい
  • ・短時間で手術が終わるので、患者さんの負担が少ない

基本的に傷口も小さく、手術も短時間で済みますので、身体への負担は少ないのが特徴です。手術中や術後の痛みが不安な方にも優しい治療法といえます。

一方、ソケットリフトの短所は次の3つです。

  • ・骨を造成できる範囲が狭い
  • ・通常のインプラントよりも費用が高額になる
  • ・内部が目視できないため上顎洞粘膜の粘膜を破いてしまう可能性もある

通常のインプラント治療に加えてソケットリフトを行う分、費用は追加されます。さらに粘膜を破いてしまうと、上顎洞炎という感染症を起こす可能性もあります。しかし、上顎の骨が薄くインプラントが難しい方にとって、ソケットリフトは効果的な治療法です。ほかの治療法と比較しても身体への負担が少ないメリットもあるので、骨を厚くする必要がある方は、歯科医師と相談しながら検討するとよいでしょう。

ソケットリフトとサイナスリフトの違いを明確に比較

インプラント治療において、上顎の骨が不足している場合に行う骨造成手術には、「ソケットリフト」 のほかに 「サイナスリフト」 という方法があります。

どちらも上顎洞の空間を利用して、インプラントを支えるための骨の高さを確保するための処置ですが、適応条件や手術の方法に大きな違いがあります。

ソケットリフト

ソケットリフトは前述したとおり、歯を失った部分の真上から専用の器具で骨を押し上げて人工骨などを入れる方法です。

基本的に骨の高さが5mm以上あるケースに適応し、1本程度の狭い範囲のインプラント治療に向いています。

歯ぐきを大きく切開せずに行えるため、傷口が小さく、手術時間も比較的短く済むのが特徴です。身体への負担が少なく、術後の腫れや痛みも軽度で済むことが多いため、患者さまにとっては受け入れやすい処置といえます。

サイナスリフト

一方、サイナスリフトは、上顎の横側からアプローチして骨の移植を行う方法です。

骨の高さが5mm未満と極端に薄い場合や、複数本にわたる広い範囲の治療が必要な場合に適しています。

ソケットリフトに比べて手術範囲が広く、処置にはある程度の時間と術者の経験が必要となります。身体への負担や術後の腫れもやや大きくなる傾向がありますが、その分、十分な骨の高さと幅を確保できるため、しっかりとインプラントを支える環境を整えることができます。

このように、ソケットリフトとサイナスリフトはどちらも上顎の骨不足に対する有効な処置法ですが、適応の判断は骨の量や患者さまの全身状態、治療計画などに基づいて行われます。どちらが適しているかは、事前の精密な検査と診断が必要ですので、気になる方はぜひ歯科医師にご相談ください。

費用の目安と保険適用の有無について

ソケットリフトは、上顎の骨が足りない場合にインプラント治療を可能にするための重要な処置です。しかし、気になるのはやはり「費用」と保険の適用があるかどうかではないでしょうか。

保険適用はされるのか?

ソケットリフトを含むインプラント治療は、基本的に健康保険の適用外(自由診療)となります。治療費はすべて自己負担となり、使用する材料や治療法、通院回数などによって費用は変動します。

ただし、特定の全身疾患(先天的な欠損や腫瘍切除後など)に該当し、かつ大学病院等で特別な申請がなされた場合に限り、公的補助や医療費控除の対象となる可能性もあります。

費用の目安は?

ソケットリフト単体の処置費用は、1本あたり5万円~15万円程度が一般的です。これに加えて、インプラント本体の埋入手術や被せ物(上部構造)にかかる費用が別途必要となります。

総額では、インプラント1本あたり40万~60万円前後が目安とされるケースが多いです。

費用の内訳としては、以下のような項目が含まれます。

  • ・精密検査・CT撮影費用
  • ・ソケットリフト処置費
  • ・インプラント本体・アバットメント費
  • ・上部構造(被せ物)の作製、装着費用
  • ・術後のメンテナンス費用 など

医院によって料金体系は異なるため、初回カウンセリング時に見積もりや支払い方法(分割払いや医療ローンなど)を確認しておくことをおすすめします。

医療費控除の対象になる場合も

インプラント治療やソケットリフトにかかった費用は、確定申告の際に医療費控除の対象となる場合があります。

ご自身やご家族の年間医療費が一定額を超える場合、所得税の還付を受けられる可能性がありますので、領収書は大切に保管しておきましょう。

費用だけでなく「治療後の安心感」も大切に

ソケットリフトは、骨が足りない方でも安全にインプラント治療を受けられるようにするための大切なステップです。長期的に健康的な生活を手に入れるための投資と捉えていただくと良いでしょう。

費用や治療内容について不安な点がある場合は、遠慮なくご相談ください。当院では、患者さまにご納得いただいたうえで治療を進めることを大切にしています。

Q1:ソケットリフトが適応となる条件は?
A1:歯槽骨の高さが5mm以上あり、治療の範囲が歯1本程度であることです。高さ5mm未満、治療が広範囲であれば、サイナスリフトとなります。
Q2:ソケットリフトが禁忌となるのは?
A2:上顎に病変がある場合、ソケットリフトは禁忌となります。