歯科コラム

歯周病と心臓病・脳卒中の関連性

身近な疾患の一つである歯周病には、命の危険がある病気を引き起こすリスクがあることが判明しています。本コラムでは、歯周病と心臓病・脳卒中の関係性について解説します。生活習慣病との関係や、歯周病治療の大切さについてもまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

歯周病は心臓や脳の疾患に影響を及ぼす

歯周病は、脳や心臓などの循環器系に影響をおよぼすため放置してはいけません。また、高血圧症・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病にも影響するとわかっています。高血圧症や糖尿病は、循環器疾患のリスク因子のため、結果として脳や心臓へ悪い影響をおよぼすでしょう。

歯周病菌には、血液の内側に張りついて血管を狭める作用があり、動脈硬化を引き起こす恐れがあります。動脈硬化は、脳卒中や心筋梗塞の直接的な原因になるため、命の危険がある病気です。脳卒中においては、歯周病の初期段階である歯肉炎では影響が認められなかったのに対し、悪化した状態の歯周炎では明らかな影響があると研究でわかっています。

歯周病は、さまざまな病気と深い関係性にあります。糖尿病のように、ときには互いに病状を進行させる相互作用も持っているため、軽視するのは危険です。一方で、歯周病を治療すると糖尿病が改善することも研究でわかっています。さらに、糖尿病を改善すると動脈硬化を防ぐことにつながり、結果として心臓病や脳卒中のリスクを下げる効果が期待できるでしょう。

歯周病治療は日々の歯磨きだけでは改善しない

歯周病の原因となる歯垢を取り除くためには、自身で行う「セルフ・ケア(ブラッシング)」と歯科医院で行う「プロフェッショナル・ケア」の両方が必要です。また、喫煙習慣や糖尿病などが歯周病を悪化させる場合もあります。そのため、丁寧な歯磨きと併せて生活習慣の見直しも行いましょう。

いくら丁寧な歯磨きを心がけても、口腔内のチェックは自分一人では難しいため、歯科医院を定期的に受診する必要があります。歯周病治療が完了したあとでも、3〜6ヵ月ごとに定期検診での「メインテナンス」を心がけてください。口腔内の状態を良好なまま維持することが、歯と体の健康を守るための大切なポイントです。

Q1:歯周病は何歳に多い病気ですか?
A1:歯周病の罹患率は、55歳以上が55-60%と非常に多く、15歳〜24歳でも20%います。年齢を重ねるほど罹患率は上昇しますが、年齢にかかわらず適切な予防やケアが必要です。
Q2:歯周病は、生活習慣病や心疾患が心配な人が気をつければよいのでは?
A2:歯周病は心臓・脳の病気や生活習慣病だけでなく、全身に悪い影響を及ぼすと判明しています。高齢者に多い誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは歯周病菌とわかっているほか、妊娠中の女性が罹ると、低体重児および早産のリスクが上がるとも判明しています。